建築様式

厚真町の古民家のタイプとしてよくみられるのが、「越中造民家(富山県)」、「加賀型・能登型民家(石川県)」、「越前型民家(福井県)」の3つのタイプです。

特に、越中造民家の特徴的な家屋構造の「枠の内(わくのうち)」づくりの古民家は10件以上確認され、平成25年に移築再生した旧畑島邸も枠の内づくりの広間があります。

越前型民家(福井県)

「二重梁構造」

厚真町の旧山口邸は、明治41年建築の木造平屋建、越前型の間取りの特徴である8畳4間の意匠を残した農家住宅である。浄土真宗が盛んで格式が高く扱われる上層の越前地方住宅の特徴である、仏間の上手に仏壇の間、座敷の奥に僧侶が休憩する坊主の間が設けられていることから、この住宅も農家住宅の中でも上層のものであることがわかります。

越中造民家(富山県)

「枠の内」
富山県の砺波(となみ)、射水(いみず)地方に多くみられる民家の伝統的な構造で、 太い大黒柱と大きな丸太梁を、金物を一切使用せずに組み上げた伝統的な建築方法です。 富山地方には「住居は親子3代100年をかけて完成させるもの」という伝統的な考え方があり、 この住居の本体部分の骨格を形成する「枠の内」は極めて頑強な造りとなっています。

「キ」の字構造

構造の特徴は、カミダイコク(上大黒柱)とシモダイコク(下大黒柱)の間にウシバリ(牛梁)と呼ばれる太い横梁を渡し、この上にハリマモン(梁間物)という縦梁を直交させて架けます。

柱と柱の間にはヒラモン(平物)と呼ぶサシガモイ(差鴨居)で結ばれ、ヒラモンの上は、天井まで2枚の広い貫きで固めその間は白壁とします。

富山地方で使われている材料は、総ケヤキを最高とし、スギ、ヒバ、マツなどが使われており、枠の内づくりの大きさが家格の象徴と言われています。町内の古民家で使われている材料は、この地域に多く生えていたカツラが多く使われていますが、その中で旧幅田邸においては富山地方から船で運んだとされるケヤキが使われています。

「枠の内」の特徴
長期的な耐久性
富山県の砺波や射水地方に見られる「枠の内」構造は、太い大黒柱と大きな丸太梁を使用し、金物を使わずに組み上げることで、極めて頑強な建築が実現されます。これにより、建物は長期にわたって耐久性を保ち、何世代にも渡って使用されることができます。
自然災害への抵抗力
日本は地震が多い国ですが、「枠の内」構造による建物は、その柔軟性と頑強さから、地震などの自然災害に対する抵抗力が高いとされています。この伝統的な建築方法は、自然の力に対して柔軟に対応することを可能にし、安全性を高めます。
伝統と文化の継承
「枠の内」構造は、富山地方の伝統的な考え方や文化を体現しています。「住居は親子3代100年をかけて完成させるもの」という考え方は、建物をただの住居ではなく、家族の歴史や文化を継承する場として位置づけています。このような建築方法を通じて、地域の伝統や技術が後世に伝えられることにも繋がります。

新旧技術の融合

断熱技術の向上
古民家の伝統的な構造を保ちながら、現代の断熱材料や技術を取り入れることで、住宅のエネルギー効率を大幅に改善します。これにより、冬の寒さや夏の暑さを和らげ、居住性の高い環境を実現しています。
暖房システムの導入
伝統的な囲炉裏や炉端から現代の断熱性能・暖房システムを活用することで、全体としてより効率的かつ均一な室温の維持を可能にしています。これにより、快適な居住空間を提供しつつ、エネルギー消費の削減にも貢献しています。
消防・防災技術の統合
古民家の木造建築の特性を生かしながら、現代の消防規準や防災技術を適合しています。例えば、耐火性能の高い材料の使用や、地震対策としての補強工事などが行われ、古民家が持つ歴史的価値を守りつつ、安全性を高める取り組みが進められています。

「枠の内」を見学

軽舞遺跡調査整理事務所では「旧木澤邸」の一部を展示しています。
入場無料で誰でも身近で見学することができます。
開館時間
9時〜17時
休館日
土曜・日曜・祝日
(教育関連団体は、事前連絡で対応可能)
住所
北海道勇払郡厚真町字軽舞205-2
お問い合わせ先
厚真町 教育委員会 社会教育グループ
TEL 0145-28-2733

町内4つの古民家

01
旧畑島邸
富山県
越中造民家
1910年(明治43年)先に入植していた福田林造氏の村外転出に伴い、当時の当主であった畑島吉次郎氏が家屋の譲渡を受け、現在の朝日地区厚真川付近に移築したのが旧畑島邸です。
02
旧山口邸
福井県
越前型民家
明治41年建築の木造平屋建、越前型の間取りの特徴である8畳4間の意匠を残した農家住宅です。浄土真宗が盛んで格式が高く扱われる上層の越前地方住宅の特徴である、仏間の上手に仏壇の間、座敷の奥に僧侶が休憩する坊主の間が設けられていることから、この住宅も農家住宅の中でも上層のものです。
03
旧幅田邸
富山県
越中造民家
幅田邸は、令和4年度に朝日地区から豊沢地区の環境保全林内に移築再生しました。明治34年ごろから3年をかけて当時の幅田家当主が建築した住宅で、築約120年の建築物です。
04
旧木澤邸
富山県
越中造民家
2018年9月に起きた北海道胆振東部地震で、軽舞地区に位置する「旧木澤邸」という古民家が全壊しました。その後、この古民家の古材の寄付を受け、軽舞遺跡調査発掘事務所(元軽舞小学校)内で、梁組を復元した広間を再現しました。この広間は現在、一般に展示・公開しています。